2010年

8月

29日

バルセロナチェアの秘密

バルセロナチェア

バルセロナチェアはスペインのバルセロナで開かれた万博博覧会のドイツ館のために、1929年にミース・ファン・デル・ローエによってデザインされました。ほかのパビリオンと違い、ドイツ館に展示品は何もなく、建物自体が展示品でした。エレガントで閑散とした建物は、石灰華、グレーのガラス、クローム、合金の柱、濃緑の大理石でできていました。この建物に置かれた唯一の家具が白い革張りのバルセロナチェアとバルセロナオットマン、そしてバルセロナテーブルでした。オットマンとテーブルには、支持部に椅子と同じ「X」の形のフレームが使われていました。ミース・ファン・デル・ローエがデザインしたこの建物と家具はいずれも画期的なデザインとみなされ、また彼のヨーロッパでの最大の業績とされました。

 

このような現代的な名作が70年以上も前にデザインされ、作られたということは驚くべきことです。バルセロナチェアはシンプルな正方形に基づく綿密なプロポーションが魅力です。椅子の高さは幅と等しく、また奥行きと等しい。すなわち、全体がきれいに立方体に納まるのです。クッションの革の長方形はルート2長方形で、スチールのフレームに取り付けてあります。椅子に革を張る工程で歪んだり引っ張られたりしても形が崩れないように、この長方形はデザインされています。脚の「X」字の構造はエレガントなフレームを構成しており、この椅子の永遠のトレードマークとなっています。

 

 

2010年

8月

17日

カンティレバーチェアの秘密

 

ワシリーチェアが椅子の材料革命だとすると、「カンティレバーチェア」は椅子の構造革命と言えます。それまで椅子といえば基本的に座面の支持を前後の4本の脚で支えるものでしたが、この椅子は片側だけで座面の支持を行う片持ち梁の構造になっています。その片持ち梁が「カンティレバー」と呼ばれていたことから、この椅子の名がつけられました。

 

このカンティレバーチェアには2通りあり、1つは、ドイツ生まれの建築家、ミース・ファン・デル・ローエによってデザインされた椅子(写真左)で、もう1つはマルト・スタムによるものです(写真右)。両者の違いは、ミース・ファン・デル・ローエがパイプをアーチ状に曲げ、マルト・スタムがパイプを90度に曲げた点です。

 

 

2010年

8月

02日

ワシリーチェアについて

 

ワシリーチェアは、曲げ加工されたスチールパイプをボルトで接合してフレームが形成されています。そして、背、座、肘掛けは、そのフレームに革を張るだけといった構成になっています。座ると少し横揺れするため、構造的な不安を感じながらも緊張感と浮遊感を得ることになります。しかし、革が体にフィットして座り心地はなかなか良いです。

 

椅子をデザインしたマルセル・ブロイヤーは、バウハウスの1期生で、鋼管を用いた家具を多く手がけました。その代表作が「ワシリーチェア」です。バウハウスの同僚講師であった画家のワシリー・カンディンスキーの誕生日にこの椅子を贈ったことから、ワシリーチェアという名前になりました。

 

私の母校である、札幌市立高等専門学校にもこの椅子が置いてあり、とても親しみのある椅子のひとつです。